
日本のものが何でも揃うデュッセルドルフで購入した、雑誌Casa BRUTUSの11月号をガイドブック代わりに持参し、ヴェネチアビエンナーレに行ってきました。
8月29日から始まり11月21日までの今年は、建築の年。総合ディレクターを、アジア初、女性初で日本人建築家の妹島和世が務めています。
金獅子作品賞を石上純也が受賞するなど、今年は、日本の建築家がスポットを浴びています。

12時10分に到着した空港から、1時間に1本の水上バスlinea Aranciata(オレンジライン)で市街中心部へ向かうこと54分。
実に20年ぶりの「水の都」です。
ホテルにチェックインしてから、遅めのランチをオラトリアで食べて腹ごしらえ。
15時までのランチタイムには、14時15分までと書かれていたラストオーダーを少し過ぎていましたが、入れてもらえました。
マグロの入ったパスタと、白のハウスワイン。
ビエンナーレのメイン会場は、旧造船所の ArsenaleアルセナーレとGiardiniジャルデーニの2カ所で、2会場共通券20ユーロです。
ただし、1会場1回のみの入場。10時から18時までの開場時間を有効に見るべく、ランチ後の残り少ない時間の今日は、アルセナーレ会場に行く事にしました。
ヴァポレット(水上バス)の1番で33分。
ドイツだけでなく、フランスやイタリアなども、11月1日が祝日で3連休となった今週末は、観光客がたくさん。ヴェニス在住の友人曰く、それにプラスしてクルーザーも寄港する機会が多く、この時期は特に人が多いようです。ちょうど、クイーンビクトリア号が、会場近くに停泊していました。
赤と白のビエンナーレの看板を目印に歩いていきます。
今年のテーマは、「People meet in Architecture」
妹島和世の意向により、従来だと約100組の招聘作家を46組に絞り、1組1室の空間が与えられたそうです。
そのうち、アルセナーレに当たったのは、21組の作家と17カ国です。造船所跡地であるレンガ積みで木の梁が見えた高い天井と広い空間を使った展示は、結果観やすく、彼女の意図したとおり、空間で作家の取り組みを体験できるものになったと思います。
ヴィム・ヴェンダース(映画監督)の「If Building Could Talk」は、会場入り口で一人一人に配られた3D用眼鏡で見るビデオ作品。妹島和世と西沢立衛のSANAAが設計したローザンヌのスイス連邦工科大学ロレックス・ラーニングセンターの中に、まるでいるかのような錯覚を覚えます。SANAAの2人がセグウェイで登場するのですが、結構長い時間、しかも上手に乗っているように感じました。意外とバランスが必要な乗り物ですよね。
今回の展示の中で、一番体験として楽しめたのは、近藤哲雄(建築家)とトランソーラー社(環境エンジニア)の「Cloudscapes」です。
人工的に発生させた白い雲の中を螺旋状のスロープに沿って歩きます。
霧ではなくて、綿菓子のようなふわふわした白い雲が浮遊しています。飛行機で雲の中を通るときに、いつもワクワクするのですが、実際に雲の中を歩き、さわろうとすると、雲が動き形がかわるその体験は、子どもにかえります。
Casa BRUTUSにも書かれているとおり、「室内に雲を生成させてさらに視覚化するのは難しいというが、ドイツの環境エンジニアたちのおかげでそれが体験できる」とか。
そのしくみは、作品の解説になっています。
そこかしこで、雲をかき分けたり、集めたり。雲を触ってみたいと思う気持ちは、万国共通にあるのでしょうね。
最も物議を醸したという、金獅子賞を受賞した石上純也の「Architecture as air」は、内覧会初日に崩落したため、辛うじて床に散らばったカーボンファイバーとアーチ状の部分が残っているのみ。
「限りなく細く軽い構造体をもつ空気のような建築」は、本当に空気のように目に見えないものとなっていました。
Janet Cardiff(アーティスト)による「The Forty Part Motet」
16世紀の多声楽曲の40声を一声ごとに録音して、楕円形に配置した40個のスピーカーから発する作品。実際に40人の人が立って歌っているように、声が動いていきます。
教会の中で聞くような音響空間で、「我、汝のほかに望みなし」というその曲を聞いていると、気持ちが清らかになっていくように感じました。
伊東豊雄(建築家)は、台湾に建設中の「台中メトロポリタン・オペラハウス」の模型と図面の展示。建築に興味のある来場者が熱心に見入り写真を撮っていました。しかし、妹島和世が、いつも「どうして建築の展覧会はこうも面白くないのだろう。模型と図面だけの展示であれば、カタログを眺めているのと同じなのではないか?」と空間を使ったインスタレーションに焦点を当てた中では、真っ当に"建築展らしさ"を出した展示だったように思います。
旧造船所の中の水を引き込んだところで夕陽を眺める人たち。見るものが多く、歩く距離が長いので、休憩するのに心地いい場所が設けられています。
見応え充分なビエンナーレですが、旧造船所で使われていた機械類も年季が入っていて、惹かれるものがありました。
写真奥に見えているのは、前述のクイーンビクトリア号です。
なんとかぎりぎり18時までかけてアルセナーレ会場を見終わった後に、夜のサンマルコ広場を観ていたら、クイーンビクトリア号は次の寄港地へ向けて発っていきました。
夜のヴェニスも大勢の人でにぎやか。
ちょうど通りがかりに開場し始めたオペラハウスで、ヴェルディーの「La TRAVIATA」のチケットを購入できたので、20時半から23時過ぎまで鑑賞しました。
たっぷり楽しんだ1日目となりました。
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