給与明細書の中身 1/24

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日本の会社の給料日は、25日。時差が8時間あるため、今日24日に給与明細書がメールで送られてきました。
そして、こちら、ドイツの事務所の給料日は、カレンダーの最後の日です。
従って、給料日まであと1週間。
給与は銀行に振り込まれ、明細書は、人事担当の繁忙度により手渡しされる日が毎月異なります。
他人の給与明細書を見ることはほぼありませんが、給与明細書からドイツ社会のしくみが見えてきます。




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給与明細書の中身 
額面金額(グロス)を1000€としてご紹介します。
①Lohnsteuer: 税金 164.40
②Soliaritatszuschlag: 旧東ドイツ圏への助成税 9.04 
    税金計 ①+② = 173.43€ 

③KV-Beitrag : 健康保険 : 79.36
④AV-Beitrag : 失業保険 : 14.00
⑤PV-Beitrag : 介護保険 : 12.25
    保険計 ③+④+⑤ = 105.61€

    控除額計 280.04€

ここで、興味深いのは、②の"旧東ドイツ圏への助成という税金"です。
1990年10月3日に東西ドイツが統一されてちょうど20年たったところですが、未だに、旧東ドイツと旧西ドイツの格差をなくすために、西ドイツ圏の雇用者及被雇用者が税金として1%未満ですが負担しています。たびたび、議論となっている税負担で、20周年を機になくなるかもしれないと人事担当から説明を受けていましたが、給与明細書には残っています。
5年毎に行われる「国内の1世帯あたりの月額所得(実質)」は、2008年にドイツで平均2914€。地域別にみると、旧西ドイツが3056€、旧東ドイツはその75%にあたる2292€で、764€の大きな開きがあったとの発表が昨年12月8日付で連邦統計局から出ています。
旧東ドイツの所得水準は、1993年の段階では、旧西ドイツの68.3%にとどまっていましたが、2003年には77.5%まで改善しており、08年に東西格差が再び開いたことになります。
03年から08年までの所得変動も、旧西ドイツが3.3%増加に対して、旧東ドイツは横ばい。
約6万世帯を対象とした調査だけに、偏りがあるのかないのかはわかりませんが、壁が崩壊したあともこの格差がなくならない限り、この税金もなくならないということだと思います。ちなみに、この助成税でインフラを整備するなど税金で賄われる工事等に使われているそうです。
1990年から2009年までの20年間にドイツ政府が旧東ドイツに投入した資金は、1.6兆€。
1ユーロを110円計算して約176兆円という数字です。
毎年GDPの5%を旧東ドイツ経済再建に投入したことになるそうです。
旧東ドイツ圏からの人口流出もいまだ続いており、1991年から2003年までに120万人減。6.6%の減少。そのため、旧東ドイツ市民の平均年齢が急激に上昇しているとも。

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この写真は、12月に入っていた"源泉徴収票"
本来は、この留学制度では、給与を含め全ての費用は日本の会社側負担です。しかし、就労滞在許可を申請してから1ヶ月たったときに、充分な財政証明書や日本の社会保険に加入している書類などを提出したものの、ドイツで社会保障から漏れることを懸念されたのか認められず、ドイツ側から給与支払いがされることで再申請し、許可がおりました。
ちなみに、これは、今までの日本からの留学生受け入れでもなかったということなので、ドイツは依然強い経済を保っていますが、昨今のEUの経済からして慎重側に働いたということでしょうか。
事務所にとって雇用者負担が一番軽い都合のよい金額が支払われることになり、その現地支給額や調整控除が差し引かれた分の残りが、日本の会社から日本円で支払われています。そして、事務所が支払った給与、雇用者負担の年金等は、日本側から還元されるというしくみです。
また、海外に滞在している間は自宅は残していても、海外転出届けを提出し、住民票が存在しないので、日本の税金の支払い義務がありません。しかし、ほかの社員との不公平をなくすために"みなし税"として、今年のみならず、来年分と合わせて2年分前払いという形で月々の給与から引かれています。


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給与明細書にのっている控除額は、28%ですが、このほかに本来は、年金が99.5€
おおよそ10%引かれます。
原則的に、年金加入の義務は就労している人が勤務する国で生じるので、国籍にかかわらず、ドイツの年金制度に従わないといけません。私のように、日本の会社に籍を残したままドイツで就労する、派遣された場合には、日本とドイツの両国の年金制度に同時に加入しなければならず、年金の掛け捨てが生じてしまいます。籍がある以上、年金を休止することができないのです。
そのため、この二重加入を防止する目的で、日本とドイツの間では、5年までの滞在期間であれば、ドイツでの年金加入は免除され、日本の年金制度のみに加入することができる、"日独社会保障協定"が2000年2月1日に発効されています。
その加入免除に必要な書類が、上記の水色の"適用証明書"です。
この10%の免除は大きいですね。

日本にいたときには、毎月事務的に送られてくるPDFデーターの給与明細書をみて、もちろん"給料日の嬉しさ"を感じてはいましたが、社会のしくみを考えるには至っていませんでした。
年金や、GDP、経済格差などについて身近に感じることができるいい機会となりました。



コメント(2)

このblogを読んでいると映画「グッバイ・レーニン」を思い出してしまいました。
何でもある世の中が本当に良いのか、とか東よりも西なのかとか色々ね。

でも数値に置き換えると、この格差はやはり同じ国家の中では
見過ごせないことなのでしょうね。。

給与明細で住んでいる国家のことの状況が分かるというのも
面白いですね。これは旅行だけでは絶対に知り得ない貴重な情報ですね。

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